転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


67 魔物除けの魔道具と騒がしい大人たち



「さて、着いたぞ。それじゃあ各自、準備を始めてくれ。俺は馬車を停めてくるから」

 御者台に居たクラウスさんがそう声を掛けてくれたので、僕たちは早速馬車を降りてバックパックを背負ったり、武器を腰に帯びたりして準備を進める。
 そんな中、僕はクラウスさんの様子を見てたんだ。
 そしたら彼は森の入り口そばにある柵で囲まれた場所に馬車を入れ、馬を馬車から外して縄でつないだ後、その柵の一角にある金属でできた壷のようなものに何かを入れてその下のスイッチを入れた。
 すると柵の中ほんのりと光りだしたんだ。

「ほらルディーン、見てごらん。あれが馬車で森に来ても大丈夫な理由よ」

 その光は僕がよく知っているもの、魔力の光だった。
 って事はあの壷は魔道具で、入れてたのは魔道リキッドかな。
 見た感じ発動してるのは多分プロテクション系の魔法だと思うんだけど、でもクラウスさんが普通にその光を素通りした所を見ると何かを物理的に防ぐものじゃないみたいなんだよなぁ。

「ねぇお母さん、あれは何の魔道具なの?」

「えっ? ああそうか、ルディーンは自分で作れるからあれが魔道具だって解っちゃったのね。あれはねぇ、魔物を遠ざける魔道具よ。ダンジョンや魔物が居る遺跡に何日も潜らないといけない時、休める場所がないと困っちゃうでしょ? あれはねぇ、その場所を作り出すための魔道具なのよ」

 お母さんが言うには、ダンジョンや遺跡で魔物が居ない部屋を見つけてそこに設置すれば、その場所をセーフティーゾーンに変える事ができる魔道具なんだって。
 新しくダンジョンが発見されると冒険者ギルドが探索し終わった階層にこの魔道具を幾つか設置するそうで、その後も定期的に魔道リキッドを補充するなどして管理をして居るそうなんだ。
 このセーフティーゾーンを作る技術が開発されたおかげで、冒険者がダンジョンや遺跡の探索で死んじゃう事がかなり減ったと言うくらい、画期的な魔道具なんだってさ。

「そっかぁ。あれがあるから馬車をここにおいてっても、だいじょうぶなんだね」

「そういう事」

 この後、今日の僕みたいに初めて森に入る子供が居る時だけじゃなく、森の奥に分け入って大物を狙うような馬車が必要な狩りをする時も毎回この魔道具のお世話になっているんだって、お母さんは教えてくれたんだ。

「おい、そろそろ出発するぞ」

「解ったわ」

「は〜い!」

 そうしているうちニクラウスさんも合流したのでいよいよ森の中へと出発! イーノックカウ近くの森ほどではないけど、この森も入り口付近にはまだ道があって、そこを僕たちは進んで行く。
 そしてしばらくすると、クラウスさんが独り言のようにこう呟いたんだ。

「ルディーン君は森での狩りが初めてだから、まずは手ごろな一角ウサギ辺りを見つけられるといいんだが」

「ああ、それに関しては心配ない。と言うか、ルディーンが居れば探す必要さえないんだ」

「ん、ルディーン君が居ればって、それはどういう意味だ?」

 クラウスさんとしては僕がまだ魔物狩り初心者だと言う事で弱い魔物を最初のターゲットにできたらいいと思って、でもそう都合よくそんな弱い魔物にめぐり合えるかなんて解んないからこんな事を言ったんだって思うんだ。
 なのにお父さんが急によく解んない事を言い出すもんだからクラウスさんだけじゃなく、エリサさんまで不思議そうな顔で僕の方を見てきたんだよね。

 そんな視線を向けられて僕、ちょっとどきどき。
 お父さん、何の説明もしないでそんな事言ったら誰だってびっくりしちゃうよ。
 もう! 大人なんだからもうちょっと考えてよね!

 こんなことを僕は考えてたんだけど、当のお父さんはどこ吹く風で、

「見れば解るよ。ルディーンやれるな?」

 当然のように、僕にこう言って来たんだ。
 まぁ、確かに何の問題も無いんだけどね。

「うん、ちょっと待って」

 と言う訳で、僕はいつものように魔力を波にして周りに放つ。
 すると周りからは結構な数の反応が帰って来たんだ。

「わっ、ここすごいね。いっぱいいるよ」

「そうだろう。でだ、弱そうな奴は近くに居るか?」

「えっとねぇ、ちょっと行った所になんびきか居るよ。とんでたり木の上にいるのと、じめんにいるの、どっちがいい?」  

「そうだなぁ。おいクラウス、多分一角ウサギとビッグピジョンだと思うんだが、どっちがいいと思う?」

 そんな僕とお父さんのやり取りを見て、何故かぽかんとしてるクラウスさんとエリサさん。
 どうしたんだろう、何か変な事でもあったのかなぁ? 僕はそう思ってお母さんの方を見ると、こっちはこっちであきれたような顔をしてたんだ。
 そして一度大きなため息をついた後、窘める様な口調でお父さんに文句を言い出したんだよね。

「もう! ハンスったら、何の説明もしないでルディーンにこんな事をやらせて。クラウスさんたちがこんな反応をするのも当たり前よ」

「そうか? でも俺だってイーノックカウではルディーンにいきなり見せられたけど、そんなに驚かなかったぞ」

「それは家でルディーンが夕飯時に何度も話をしてたからでしょ」

 そんなお母さんにお父さんは必死で弁解するんだけど、こうはっきりと言われちゃったもんだからしょぼんとしちゃったんだ。
 そしてその二人のやり取りを見て再起動したのか、エリサさんがちょっとおっかなびっくりって感じでお母さんに質問してきた。

「えっとシーラさん、それってどういう事? ルディーン君が今なにをやったのか、教えてもらえると嬉しいんだけど」

「ごめんなさいね。ルディーンが魔法を使えるというのは前に話したでしょ? この子、その魔法の力で近くにいる獲物を見つけることが出来るみたいなのよ。そうよね、ルディーン」

「うん! それでねぇ、このまほうだけどイーノックカウの森に行ったおかげでもっとうまく使えるようになったんだ。だから、どれくらいつよいのがいるかもわかるようになったんだよ! すごいでしょ」

「へぇ、それは凄いわね。よくがんばったわ、ルディーン」

「えへへっ」

 イーノックカウの森でレンジャーのサブジョブが付いたおかげで索敵魔法が強化された事をお母さんに教えてあげたらほめられちゃった。
 だから僕は思わず照れ笑いをしちゃったんだけど、そんな僕を見てたエリサさんはそれどころじゃなかったみたい。

「魔物がどこに居るのか解るって……それじゃあどんなに隠れるのがうまい魔物でも狩れるって事じゃないの」

 そんな事をお母さんに言ってきたんだ。
 そしたらその話を横で聞いてたお父さんが、うんその通りだよってエリサさんに教えてあげたんだ。

「ああ、確かにその通り。実際イーノックカウではブレードスワローを何匹か狩る事ができたし。な、ルディーン」

「うん、いっぱい獲れたからみんなびっくりしてたよね」

「ブレードスワローを数匹……」

「あらハンス。そんな話、聞いてないわよ」

「何言ってるんだ、肉を土産に持って帰っただろう」

「って、あれってブレードスワローの肉だったの!?」

 でも、そしたらもっと大騒ぎになっちゃった。
 そう言えばお家に帰ってから僕がイーノックカウで鳥の魔物を狩ったって話、してなかったなぁ。
 だってさ、一匹分のお肉以外はみんな売ってきちゃったから忘れてたんだもん。
 それにジャイアント・ラッドのほうが大きくて、倒したって自慢するならあっちの方が良さそうだったし。
 ブレードスワローって飛ぶのが早いだけで、とまってる時に魔法で撃ったら誰でも簡単に倒せそうなんだもん、いくら狩っても自慢になんかならないって思ったんだよね。


 その後もしばらくの間この話が続いたんだけど、このままじゃいつまで立っても森に入れない。

「もう! いいかげんにして。森でさわいじゃダメ! もう! 大人なんだから、みんなちゃんとしてよ!」

 だから僕は大きな声を出して、両手を突き上げながらみんなを叱ったんだ。
 そしたらみんな一瞬ぽかんとした目で、僕を見て、

「ごめんね。ルディーンの言う通りよね」

「ああそうだな。すまん、ルディーン。お父さんが悪かった」

「ごめんなさいね、ルディーン君。おばさん、びっくりしちゃったから」

「本当にすまん。そうだな、今日はルディーン君の記念すべき初めての狩りなんだもんな」

 それからちゃんと謝ってくれたんだよね。

「いいよ。ちゃんとあやまったから、ゆるしてあげる」

 だから僕も、もういいよってみんなを許してあげたんだ。
 これからみんなで森に入るんだもん、喧嘩したままだと危ないもんね。


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